フライパン父さんの人生日記 - The simple path to make life better for my daugther and sons -

40代後半サラリーマンでミニマリストなブロガーが、子どもたちに残す人生日記。ミニマルライフ、筋トレ、投資、旅、ガジェット。

成長を促すものとは

「初めて見る軍の棺には、
あのマークが横たわっていた。
じっと目を閉じた彼の顔は、
とてもハンサムで、凛々しかった。

その彼に向かって、私は心の中で叫んでいた。
『マーク、先生に何か言ってちょうだい。
あなたが話してくれるのを待ってるから。
お願い、昔みたいに、おしゃべりをしてちょうだい』

教会は、マークの友だちで、
いっぱいだった。

チャックの妹が、
『戦死した兵士を天国へ送る歌』を歌った。

墓地に移動した後、
牧師のお祈りに続き、軍のしきたりにそって、
弔いのラッパの音が、響き渡った。

一人ずつ、棺に聖水を振りかけて、
お別れをした。

最後に、私の番がやってきた。

そこへ、棺の付添いとして立っていた兵士が、
近寄って来た。

『失礼ですが、マークの数学の先生ですか?』

私は、棺を見つめたままうなずいた。

『マークから、先生のことはよく聞いています』
とだけ言うと、その兵隊は、敬礼をして去っていった。

葬儀が終わると、クラスメートたちは、
会食のためにチャックの家に向かった。

そこでは、マークの両親が、私を待っていた。

『先生に、ぜひお見せしたいものがあります』と、
ポケットから、財布を出しながら、
父親が話しかけてきた。

『マークが死んだ時、身につけていたものです。
先生なら、これが何かおわかりになると思います』

そして、財布の中から、二つ折りになった紙を、
破れないように、丁寧に取り出した。

私には、それが何かすぐにわかった。

昔、クラスメート全員が、
マークのいいところを書き、
さらに、私が書き写した、
あのリストだった。

何度も、何度も、
マークが手にとって、読んだのだろう。

破れそうになったところを、
何か所も、テープでつなぎ合わせてあった。

マークの母親は、
『先生、ありがとうございます。
ご覧のとおり、
マークは、これを宝物にしていたんです』と話した。

教え子たちが、マークの両親と、
私のまわりに、集まってきた。

チャックは、はずかしそうにほは笑み、
こう言った。

『先生。僕、例のリストを、
まだ大事にとっているんですよ。
机の、一番上の引き出しに、入れています』

ジョンの妻も、その後をついで言った。
『私たちも、結婚記念アルバムに入れています』

『私もやっぱり持ってますよ、先生』と、
マリリンが続いた。

やがて、ビッキーが、
ハンドバッグから財布を取り出すと、
中から、すっかり古びて、
擦り切れた紙が現われた。

それを見せながら、
彼女は、目を大きく見開き、
まばたきもしないで言った。

『私も、肌身離さず持ち歩いています。
あのリストは、みんなにとって、それだけ大事なものだったんです』

その言葉を、聞いたときだった。

私は、ついにこらえきれなくなり、
椅子に座り込んで、泣き始めた。

死んだマークと、そのマークに、
二度と会うことのない友人たちのために、涙はとめどもなく流れ続けた」

ヘレン・P・ムロスラ